会陰ヘルニア
写真のイタリアングレーハウンドさんの肛門の右側が膨らんでいるのがお分かり頂けるでしょうか。これは会陰ヘルニアという病気で主に中高齢の雄犬で肛門付近の筋肉の間に穴が開いて脱腸を起こして排便困難や排尿困難を起こす病気です。この病気は基本的に去勢手術をしていない雄犬で肛門付近の筋肉が萎縮してしまう事や、前立腺肥大の為に排便時にいきんで腹圧があがる事など、精巣から分泌される男性ホルモンが関係して起きます。つまり、適切な時期に去勢手術をすれば防げる病気です。
会陰ヘルニアは基本的に外科疾患であり手術以外の治療法はありません。内科治療は今出ている症状をやわらげる治療でしかありません。そして重要な事は、この病気は進行性の疾患なのです。ですから長く様子をみると病状が進行して手術が難しくなりますし、手術をしても再発する可能性が増してしまいます。中高齢の犬の手術をためらう気持ちは分かるのですが、老齢性の疾患ですから、待てば待つだけ犬は年をとっていって条件が悪くなっていきます。
手術には様々な方法がありますが、様々な方法があるという事は裏を返せばゴールデンスタンダードと呼ぶべき、絶対いい方法がないという事です。進行して筋肉の萎縮が重度になれば、自分の筋肉だけでは穴を塞ぐ事ができずにメッシュなどの人工物で塞ぐ必要が出て来ます。最近はプロリンメッシュなど非常に優れた人工材料が使えるようになり、当院でも用意はしていますが、使わずに済むならばその方がいいと考えています。
写真のイタリアングレーハウンドさんは手術を行い、内閉鎖筋という骨盤の裏側にある筋肉を利用して穴を閉鎖しました。同時に去勢手術、直腸および前立腺の固定などの手術をしないといけませんから、時間もかかる大きな手術ですが、今のところ順調に経過しており、長年の排便困難から開放されました。去勢手術や腸の固定など再発を防ぐ手術を組み合わせていますが、再発や今度は反対側が破れたりする可能性はゼロではありません。そうは言っても、とりあえず一安心です。