飢えさせない

 病気や痛みのために食べる気力をなくした動物に対して行う治療として、食道瘻(ろう)チューブの設置があります。首の皮膚から食道の中に栄養チューブを設置して流動食を与える処置です。流動食を与えてまで生かさなくてもいいのではないかと言う人もいますが、病気の動物は低栄養のために食べる気力を無くし、悪いジレンマに陥っていている事が多く、適切な栄養管理を行うと食べる力を取り戻すこともしばしば経験します。最近はかなり太いチューブを入れますのでペースト状のフードが苦もなく与えられます。チューブの設置には全身麻酔が必要となりますし、嘔吐の症状の強い動物は適応外になります。
 この治療を提示した飼い主さんは皆悩まれるのですが、最終的に選択して良かったと言っていただけることがほとんどです。飲み薬も投与が簡単になりますから、食欲がなくなって薬も飲めなくなり一気に悪くなるといったシナリオも避けられます。写真の猫ちゃんはホルモンの異常や加齢もあって食べられなくなりましたが、食道のチューブからの給餌をして元気を取り戻し、体重も増えて来ました。最近はお腹が空くとチューブから餌を入れてくれとねだるようになってきました。自分でも食べれそうなのに猫はサボリだすんですね。

 数年前に腫瘍専門医が講演で「たとえ最後には病気に負けてしまうとしても、動物を飢え死にさせてはいけない」という事を言っておられたのが印象深く、常に意識しています。