対症療法

 対症治療と言うと消極的なイメージですが、時には「積極的な対症療法」もあります。
 写真のダックスさんは前の動物病院で1年以上前に肛門嚢アポクリン腺癌という肛門の横にできる悪性腫瘍を切除したのですが排便時に痛がるという事で来院しました。レントゲン写真では骨盤の中のリンパ節に巨大な転移巣が認められ、この転移巣が閉じられた骨盤の中で大腸を圧迫して激しい便秘を起こしていたのです。これは肛門嚢アポクリン腺癌というがんで典型的に起こる症状です。
 がんの治療は根治療治、緩和治療、対症療法の三段階があり、根治が望める場合は生活の質が低下してもやむなしという事で根治を目指した手術を行うこともありますし、根治が望めないがんの場合は緩和療法としてがんを弱めることを目的に手術や治療を行うこともあります。対症療法はがんと直接戦う事が難しい場合に、がんの症状だけをとる治療です。
 
このダックスさんではがんの根治が望める状態ではなく、がんを減量するような緩和手術もむしろ有害になると判断しました。結果として病巣には触れず、がんと直腸を取り囲む骨盤の一部を取り除く手術をしたところ、便が出るようになりました。手術後、1年近くが経過した現在も生活の質を保って元気にしています。手術というと可哀想だと言って頭から拒絶される飼い主さんもいますが、がんと共存しながら痛みや苦しみ、症状をとる事を目的とした手術もあります。