甲状腺機能低下症

犬には甲状腺機能低下症という病気があります。甲状腺ホルモンは細胞の活性を司っているホルモンです。低下すると活動性が落ちて代謝も下がり、体重が増加して行きます。皮膚の代謝が落ちるので皮膚は分厚くなって左右対称性に脱毛します。この病気は遺伝的な病気と言われており甲状腺に対して自分の免疫が反応する事で起きます。そして発症するのはある特定の純血種(ほとんどは大型犬)の、それも比較的若い犬である事がほとんどです。
 写真のゴールデンレトリーバーは3歳になってから元気がなくなり、太ってきて脱毛してきたとの事で来院しました。顔は眼の上の皮膚も厚ぼったくなり、いわゆる悲しそうな顔になっています。当院ではT4、fT4、TSHという3種類のホルモンの測定を行い、甲状腺機能低下症と確定診断しました。甲状腺ホルモンの補充療法を行い2カ月後の写真が下の写真です。脱毛も改善して体重も落ち、血液検査でみられた軽度の貧血と高脂血症も改善しています。何より表情が違いますね。この病気はなったり治ったりする病気ではなく、一度発症すると一生涯にわたって補充療法が必要です。
 この病気は非常に有名なのですが、本当はまれな病気と言われています。東京の大学に有名な内科の先生がいますが、ホルモンの異常ばかり診察しているその先生をして、年に1例くらいしか診断しないと言っていました。
 動物病院の世界ではこの病気を過剰に診断している傾向があると言われています。何らかの慢性的な病気を抱えている場合、体は生理的な機能として代謝を落として安静にさせようとします。自分は病気だから余分なエネルギーを使わないようにしようとするんですね。こういった時に血液検査をすると甲状腺ホルモンは低い値を示しますが、これは二次的な甲状腺機能低下症と言われて、治療対象ではありません。病気だから寝ている人を無理矢理起こして運動させるようなものです。いずれにせよ、一生涯投薬が必要な病気を軽々しく診断してはいけませんので、検査費用はかかりますが少なくとも3種類のホルモンを丁寧に評価する事が大切だと思っています。