巨大な腫瘍
15歳の雄の柴犬さんが元気食欲がなく、お腹が張っておかしいとの事で紹介来院しました。明らかにお腹がパンパンに張っています。
レントゲン検査と超音波検査ではお腹の中いっぱいに占める大きな腫瘍がみられました。また、血液検査では貧血とともに腎機能の悪化を示す所見がみられました。貧血はともかくとして腎不全は非常に厄介な所見です。手術をしても腎臓が麻酔に耐えられるか、手術が上手く行ってもその後、腎不全が進行すれば、結果的に長く生きる事は出来ないかも分かりません。また、腫瘍は位置や構造から脾臓もしくは消化管由来が考えられましたが、あまりに大きいために元の構造が消失し発生部位も不明でした。
飼い主さんと相談して、その日の晩に開腹手術を行いました。決め手はまだ本人が余裕のありそうな表情をしている事、そして腫瘍があまりに大きい事です。
血液検査や画像診断のデータは非常に重要ですが、進むべきか退くべきかという最終的な判断はその動物の表情や見た目の年齢なども考慮します。また、あまりに大きな腫瘍は、大きくなるまであまり悪さをしなかったとも言えますので、実は案外悪性度の低く摘出可能なものが多いのです。
今回の巨大な腫瘍は大網という膜から大量の栄養血管を得ており、それを丹念に剥離止血していくと、やっと全貌が明らかになり、大腸の壁の筋肉から発生していました。大腸の一部を巨大腫瘍と一緒に切除して、残った大腸の端と端を縫い合わせて手術を終えました。長い手術になりましたが鎮痛剤や血圧を上げる薬の助けを借りて何とか手術に耐えてくれました。腫瘍の総重量は1.2kgもありましたから、何と体重の約6分の1です。
術後は発熱などもありましたが1週間弱の入院を経て退院し、現在のところは貧血も順調に改善してきています。腎不全は残っていますが、腎臓病用の食餌や薬のおかげで手術前よりも改善しています。15歳と言えば平均寿命に近づいているとも言えますが、病気で亡くなるのと寿命で亡くなるのは違うと考えています。何とか助かった命ですから、腎臓のケアをしながら出来るだけ長く生きて欲しいと思います。