もうり動物病院｜松江市西川津町

デンタルケア

毎日のハミガキが効果的です。

様々なデンタルケア用品があります。

デンタルケアは仔犬のしつけや遊びの一環として始めるのが理想的です。大人になって、しかも歯周病で歯が痛くなってからデンタルケアを始めるのは困難です。
　当院でも犬猫のデンタルケア専用の様々な用品と取り扱っていますが、中でも犬が飲みこんでも大丈夫でおいしい味のついたハミガキ粉が優れものです。まずはおいしいハミガキ粉で口の中を触らせることに慣れさせましょう。犬が口の中を触られることを喜ぶようになればしめたものです。ハミガキ粉を歯ブラシにつけてゆっくりハミガキを始めましょう。最初は犬が嫌にならない範囲で短時間で留めましょう。犬が嫌がることは飼い主さんにとっても苦痛になりますので長く続きません。
　犬が嫌がったり、飼い主さんが時間がとれないなどの理由でハミガキが難しい場合はハミガキガムも効果的です。ハミガキガムも様々な種類や形状がありますが、犬が慌てて飲み込んだ際のノドに引っかかるようなものでは危険です。そういった点に配慮して作られたものを選びましょう。当院では製薬会社が作っているガムをお勧めしています。また、ハミガキガムは与えっぱなしにせずに飼主さんが片方の端を持ってゆっくり食べさせるようにすると効果的です。

デンタルケアって必要？

　室内で飼われる犬や猫が増え、動物と飼い主との距離が近くなった為、飼い主の皆さんが犬や猫の口臭や歯石の付着など歯周病の存在を認識する機会が増えてきています。
　動物保険の会社の調査では犬の飼い主の皆様の悩み事の第4位は歯磨きだそうです。また、米国のデータでは動物病院に来院する理由の実に31%は歯の問題とされています。また、3歳以上の犬と猫の85%が歯石の問題を抱えており、4歳以上の犬と猫の10%が重度の歯周病に罹患していると言われています。

犬や猫の歯周病

割れて感染した歯

眼の下からの排膿

ヒトでは歯の病気といえば「虫歯」を連想しますが、犬や猫には虫歯はほとんどありません。犬や猫の口の中には酸を産生して虫歯の原因となるミュータンス菌がほとんど増殖しないからです。犬や猫では口の中の環境が悪化すると環境がアルカリ性になり、分厚い歯石が形成されていきます。歯石は歯肉と歯の間の歯肉ポケット内も侵していきます。歯石は菌の塊です。何かのきっかけで歯石の中の菌は血液中に入り込み、体の他の臓器に影響を与えます。腎臓や心臓、肝臓などの感染症の原因菌を調べると口の中由来の菌であったということは、しばしばみられることです。

歯科処置の実際

重度の歯周病の犬の歯

歯のX線撮影を行います。

X線写真で歯周病の程度を判断します。

まずは超音波スケーラーで歯石をとります。

臼歯の抜歯が必要な場合は分割した上で抜歯します。

歯の表面を研磨してフッ素加工し再付着を防ぎます。

歯科処置後の歯

歯科処置は基本的に全身麻酔下で行いますので、避妊去勢手術と同様に術前検査を行い、麻酔をかけてよいかを判断します。術前検査については避妊去勢手術のページを参照して下さい。
　歯科処置は処置室のシンクの上で歯科・外傷処置用の麻酔器を使用して行います。まず、歯科用X線撮影装置を用いて歯のレントゲンを撮影し、歯周病の程度を判断します。合わせて歯の動揺がないか、歯肉ポケット内の状態がどうかを調べていき、抜歯の必要があるかを判断します。超音波スケーラーで歯石を落としていきます(スケーリング)。この時、歯の熱損傷を防ぐために水しぶきが飛びますので顔の他の部位が濡れて体温が下がらないように配慮します。歯肉ポケット内の歯垢や歯石をキュレットで除去し、不正な肉芽を除去します。抜歯が必要であれば必要に応じてマイクロエンジンを使って歯を切断・分割して抜歯します。
　実は超音波スケーラーで歯石を落としただけでは歯の表面に細かい傷がついた状態となり、かえって歯石がつきやすい状態となります。そのため、ポリッシングという工程が必要で二種類の研磨剤と機械を使用して歯の研磨とフッ素コーティングを行います。ここまでの行程を入れると2時間弱の時間を要することもしばしばあります。スケーリング以降の行程の差は見た目には分かりにくいのですが、処置後に歯の健康を維持出来る期間が大きく変わっていきます。
　歯石除去を行うと歯は白さを取り戻したように見えますが、歯周病の影響が完全になくなる訳ではありません。適切なデンタルケアを行っていかないとすぐに元に戻ってしまいます。